#氷雪のシアタールーム

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『最強のふたり』感想:正反対って楽しい(ネタバレあり)

2021年は今まで何となく観る機会が無かったド定番の映画(特にヒューマンドラマ系)をちゃんと観る年にしたいなあと思っておりまして、その1本目という感じで観ました!
ブログで感想を書くところまで出来れば最高なので、やれる限りはやっていきたいね。

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大枠の感想はツイートで言っています!

一言で感想を言うならま~~良いブロマンス映画でした。こんな関係性、グッと来ないわけがないのよ……。
そもそも『最強のふたり』ってタイトルが良すぎるね。原題は『Intouchables』とのことなので、意味合いがかなり変わっているという百番煎じな指摘はもっともなんだけどそれはそれとしてこの語感の良さ。わたしが一番最初に考えたことにして推しカプの同人誌のタイトルにしたいもんな。

オタクなのでオタクみたいなことを言いますが、フィリップ(白人で資産家、事故で首から下が麻痺している)が他の候補者と明らかに違うドリス(スラム街出身の黒人青年)に興味を持って、雇用を決めたという導入は夢小説で言うところの「おもしれー女」概念に近いのかなって思いました。
(「おもしれー女」概念とは今まで女にモテていた男キャラが夢主にそっけない態度をとられ、「オレにそんな態度取るなんておもしれー女」と言ってその新鮮さから惹かれ始めるという夢小説におけるいわゆるテンプレ展開)

マジメな感想としては、障碍者を扱った作品となるとどうにも感動ポルノ的になりがちな印象があるんだけどこの作品には悲劇感、いわゆるお涙頂戴的ないかにも"泣かせ"のためのシーンが全然ないところがすごく良かった。
勝手に物語は死によるふたりの別れで終わるんじゃないかと思って見始めたから、湿っぽくないどころかずっと笑顔で観られる作品で、ふたりが温かい関係を築いていくのを丁寧に描いていたという印象です。

すごくベタなんだけど、白人と黒人、資産家とスラム出身、中年と青年という正反対のステータスを持つふたりがそれぞれの価値観を知り、人として変わっていく過程が良かったですね。
ていうかふたりの心の交流の様がね、もう本当に微笑ましくてふたりのこと大好きになってしまうわけですよ。

最初にふたりの関係が一歩進んだシーンは外出のとき車椅子のままフィリップを車に乗せるのをドリスが嫌がってマセラティに乗ったところだと思うんだけど、エンジン音を聞いて大はしゃぎするドリスとフィリップもそれにつられて笑っちゃうところ、あそこからもうニヤニヤが止まらんわけ。
そして半年間文通してた女性と会う約束をドタキャンしたフィリップが「遠くへ逃げたい、息が出来るところへ」とドリスに電話をするシーン、す、好き~~~!そのまま飛行機に乗ってフィリップにとって大切なスポーツであるパラグライダーを二人でするまでの流れも込みで最高だった。

飛行機の中でのやりとりもスゲー良かったね。ドリスは高いところが怖くて「あんたは運が悪いから(飛行機が落ちそうで)怖い」とか「あんたは悲劇に慣れてるけど俺はそうじゃない!」とかもうめちゃくちゃひどいことも言っちゃうんだけど、フィリップもそんな悪態全然気にしないでドリスをからかっててね。

あとは薬の副作用で夜中に発作が出て呼吸が出来なくなったフィリップをドリスが外に連れ出してマリファナを吸わせたあとカフェでフィリップが過去の話をするシーンとか、雪の中ふたりで外に出てドリスが一方的にフィリップに雪玉をぶつけるシーンとか、オペラを見て「あの恰好マジ!?木が歌ってる」と周りも気にせず笑い始めるドリスとそれを見て同じように笑いがこらえられなくなるフィリップのシーンとか、誕生日にみんなでダンスをするシーン(あのときふたりはおそろいのピアスしてなかった?)とか、絵のくだりとか、ああマジで良かったな。思い出してまたニヤニヤできる。

そしてこんだけ言ってアレだけどこのふたりの関係が良くも悪くも"いかにもすぎるホモソーシャル!"って感じなのは正直観ててウーンと思いました。ホモソーシャルとブロマンスがマジで切っても切れない関係なのは重々承知してるけどホモソーシャルの事は普通に憎いので…。
話の流れとはいえ性処理はどうしてんの?って特に悪びれもせず聞いて(ドリスの性格もあると思うけど)、ふたり並んでメンズエステ的なものを受けてるシーンが絆深まりシーン一覧の中に入れられてて、まあ分かるけどさ~女をダシに男の絆を深めるところね~正直、少し残念でした。
一連の流れがバッサリ無くても上に挙げたシーンたちで十分ふたりの関係が深まっていくところは描けると思ったので余計に。男同士だからってエロい話しなくても仲良くなれるでしょ普通に。

あとドリスが仕事を辞める理由はあんまりピンと来なくて、まあ多分母親が仕事で遅いのに子供がたくさんいる家庭に大人がいたほうがいい的なことなのは分かるんだけど……仕送りとかでどうにかならん?給料がいいというのは明言されていたし。弟の問題っていうのも少し話をつけたらすぐ解決したみたいだったし、結局すぐフィリップの様子を伺いに戻ってるし。2時間の尺でやるのが難しかったのかな?

というわけで、ところどころ気になるところはあったものの、それを上回るくらい好きなところがたくさんあって素敵な映画でした。
観てよかった!