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『グリーンマイル』感想:人間最悪胸糞鬱映画は最高(ネタバレあり)

新年始まってから未見の名作に挑戦しようといろいろ観る気になっておりまして、今回選んだのは『グリーンマイル』。死刑囚官房の看守ポールと人の病気を治せる特別な能力を持つ大柄な黒人死刑囚ジョン、そしてその周りの人々を描いた作品です。

https://www.netflix.com/title/60000417

原作スティーブン・キング、監督フランク・ダラボンというふたりはあの悪名高き『ミスト』(本当に大好きな映画)のコンビではあるのですが、『グリーンマイル』は結構感動ものって聞くじゃない?ほんとお?と思ってみたところ……バンザイ!ミストに勝るとも劣らない人間最悪映画でした!!
ということで最悪ポイント(言い換えればウキウキポイント)をメインに感想を書きます。

最悪ポイント①そもそも冤罪で人が死ぬ

これは最初から分かっている話なのですが、この死刑囚として収監されているジョン・コーフィ、女児2人を強姦殺人なんか当然していないわけですよね。
そして死刑前夜に逃げたければ逃がしてやると言われても「人の悪意に疲れた(要約)」というようなことを言って死刑を受け入れるという展開、めちゃ勝手になんだかんだで彼は最後死刑を免れていい感じに話が終わるんだろうと思っていたので、いや普通に死刑なるんかい!!!という感じでかなり胸糞でよかったです。
「ジョン自身が死を望んでたからハッピーエンド」みたいな評価もあるみたいですが死を望むようになったのは人間の最悪さが由来なわけで…それで自分から終わりを選ばざるを得なくなるくらい疲弊させられた人生ってハッピーか???
死ぬ必要のない善良な人間が様々な悪意に晒され続けた結果疲れ果てて死を選ぶ、ほぼダンサーインザダークじゃんこんなの。

あとジョンが犯した罪と思われていた女児2人の強姦殺人の真犯人、罪を暴かれることなく全然別の方法で(死刑でなく)死ぬというのも胸糞ポイント高い。やりきれねえ~!最高!

それはそれとしてジョンが悪人には平気で制裁を加えるところは正直怖かったですね。良くも悪くも純粋なんだなーとは思いますが……。

最悪ポイント②死刑失敗シーンの凄惨さ

これ一番ドキドキしたシーンなのですが、電気椅子での処刑が失敗するところ本当に良かったですね。電気椅子の処刑では電極と頭の間に濡れたスポンジを置くことでなんかこう…いろいろとうまいこと死刑が執行されるのですが、そのスポンジをわざと濡らさずに置いて処刑が進み、結局その死刑囚は楽に死ぬことが出来ず長い間苦しむという…ね!

このシーンの"嫌"さがマジで半端ではなく、電気流してからのショッキングさは当然の事、実際処刑が始まるまでの緊張感というか、観てる側を「えっこれやばくない?(絶対やばい)」とソワソワヒヤヒヤさせる空気のうまいこと!これだけでも観て良かった…こんな最悪シーンなかなか観られないと思います。すさまじい初見の感動があった…。

あと普通に死刑を被害者遺族とかが見に来るというのが最悪だよね。野蛮すぎるだろ。

最悪ポイント③パーシーというキャラクター

パーシーというコネ持ち性格最悪クソ厄介新人、こいつのキャラと末路がま~~~これも良かったですね!
上述の死刑失敗もイタズラ感覚でやらかすし、この死刑の前に囚人が大事にしてたネズミを踏みつぶすし、主人公とその親友が囚人をなだめるためについた優しいウソも死刑執行の直前にウソだとバラすし。
看守側も囚人側も(パーシー以外の1人を除いて)みんなそれなりに善良な人間なのにパーシーだけは露骨に悪意のある人間として描かれていて、この映画のヤダ~!となるシーンを作っているのは半分くらいこいつだったように思います。そのくせ実は臆病でいざという時は動けなくなるのもなんやこいつ…感があった。

最後はいろいろあって精神が崩壊し、何かと因縁のあった死刑囚ウォートンの登場シーンと同じ病室で同じ状態になる(ウォートンは演技だったけど)ところはしびれました。
そして収容された精神病院は元々転属するはずだった、そしてそこから華々しいキャリアが始まるはずだった精神病院だというのも皮肉が効きすぎ。最悪。最高!脚本の悪意がすごい!

ブルータルがステキすぎる

話は変わりますがこの最悪映画の唯一の清涼剤として(個人の感想です)ブルータルというキャラクターがいるのですが、この人がマジでステキだった…。
お顔立ちがなんとなくみんな大好きサイモン・ペグ氏に似ているので、マジの序盤ほぼ顔しか映ってなかったときは顔の印象で小柄良い人タイプかな?と思っていたのですが、ちょっとしてから引きで何人か並んだシーンで見たらその場にいる誰よりも身長がバカでかくて好き…となりました。マジで信じられないくらいデカくて最高だった。好きすぎ。

あと主人公のポールを一番に理解してくれていて、いつも温厚で優しく、しかし荒っぽい動きが必要なときには率先して動くところもあり…囚人が暴れてみんなどうしようもなくなってたところにスッと入ってきて鎮圧してくれたところステキが過ぎました…。
ポールとのニコイチ感、言ってしまえばブロマンス感、それがもうすごくて…だっていつもポールが欲しい言葉くれるし…ふたりの息の合い方が尋常じゃないし…ほんとすごくて…。
中盤で彼が独身だということがわかるのですが、あ~そういう…ことね!完璧に分かってしまった!!ってなりました。(個人の感想です)

終わりに

見る前は3時間は長いなあと思ったのですが、メインである主人公ポールと死刑囚ジョンだけでなく、同じE棟に収監されている他の死刑囚についても結構掘り下げられていて、しかもそのすべてのシーンが密接に関わっていて意味があるのですさまじかったです。さすがダラボン映画が上手い……。
このストーリー自体がポールがある人に語って聞かせている物語であるという構成もわたしは良かったと思います。善良な人間を死なせた罪と、無限にも思える長寿はそれに対する罰だという展開は最後まで救いがない感じがして好きでした。

それにしても大筋のストーリーだけでも無実の者が死刑で死に、真犯人はその罪を裁かれず別の死に方をする、これが胸糞でなくてなんなのか!?と思うんですけど、ほんとに"泣ける感動映画"みたいに言っていいのか???わたしは大好きです。人間が最悪だったので。