#氷雪のシアタールーム

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『ベルファスト』感想:穏やかな日々とヒリついた暴動と(ネタバレなし)

監督であり俳優でもあるケネス・ブラナーの半自伝的な作品。

基本的には主人公バディの穏やかな日常を微笑ましく観るシーンが多いのですが、プロテスタントとカトリックが対立していた時代の暴動を描くところもあり、このあたりのヒリついた雰囲気は観ていてハラハラしました。柔らかい日々のすぐそばに暴力があるというバランスは割と『この世界の片隅に』に近かったと思います。

バディの日常パート、クラスの気になる女の子と仲良くなりたくてテストを頑張ろうとするんだけど、そこで祖父がちょっとズルい技を教える……みたいなシーンが好きでした。その他家族とのやりとりはやや不穏な空気もありつつも毎日をつつましく暮らしている様子がほほえましいし、地域コミュニティとの繋がりも描いていて、ブラナー監督はこの時期の生活が本当に好きだったんだな~と思えました。

最後のシーンで、バディとバディの父親の会話で、「あの子はカトリックだけど結婚できる?」(バディ一家はプロテスタントで対立状態にある為)というバディの問いかけに対する父親の回答がすごく良かったです。宗教が違っても同じ人間なのだというメッセージね……。

めちゃくちゃ衝撃的な展開があったりびっくりするような演出をしていたりするわけではないのですが、観終わった後じんわり良かったな……と思える作品でした。

 

そして本編と直接は関係ないですが、いくらも長引かせることが出来ただろうにこの内容で98分で納めた監督の手腕がすごいですね。短い作品ってやっぱり見やすい。