#氷雪のシアタールーム

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『ナイル殺人事件』感想:愛のためなら人も殺せる?(ネタバレなし)

名探偵ポアロシリーズの実写化。テーマは愛。そう、愛の話なんだよなあ……。

原作は未読、本作を観に行くために前作『オリエント急行殺人事件』を前日に観た程度のにわかです。

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前作の『オリエント急行殺人事件』を観たとき、どちらが正義でどちらが悪と割り切れない複雑さと想像もつかないような犯人の設定でめちゃくちゃ度肝を抜かれてしまい、すんげ〜おもしれ〜!となったので、そういう意味では今作は割と「普通」のミステリーだな〜という感じで、前作を観終わったあとほどの衝撃はありませんでした。エンタメ慣れした現代の感覚でもすごいと思えた前作が異端だったのかも。

てか超個人的な話として、やっぱりどれだけ愛していたとしても自分が幸せになるためだけに人殺しをするという感覚に納得も同意も出来ないので(みんな普通そうだからこそ物語になるという前提は理解した上で)まったく好みではなかったです。それが人間味ってやつすか?そうすか……。

今回はとにかく愛がテーマで、新婚夫婦の愛、破局してしまった愛、隠している愛、ブークくんの愛、ポアロの愛ともうみんなめっちゃ愛。レズビアンカップルよかったですね。ここは改変らしいんですけど、こんだけ愛をやるなら異性愛ばっかじゃつまんねーもんな。

事件が起こる前のほのぼの日常パートすき。甘いもの食べてご満悦のポアロくん、慣れないお酒を飲んでぱやぱやになるポアロくん(ここはまあ日常かと言うと微妙だけど)など。今回はおひげの由来とか気になる女性を前にたじたじになるシーンとかでより人間っぽい感じでかわいかったです。

あとレティーシャ・ライトちゃん演じるロザリーのキャラクターがめちゃくちゃ良かった!かっこよくて賢くて芯があって、彼女がしゃべるたびにウオ~好きだ~になった。ガル様演じるリネットに「女でも男と同じ優秀な経営者になれると言ったのはあなた。夫のために考えを変えないで。」という台詞(ややうろ覚え)があまりにもよく……。アホ夫、聞いとるか?!
リネットも素敵でした。夫の元恋人のジャッキーに「友達でいたかった」と話すシーンが好きでしたね。いやもっとちゃんと話し合えとも思うが。

 

結構改変していることに対して原作ファンの人たちから否定的な意見もあるようですが、映画だけ観ている分には破綻してる~!とかは思いませんでした。
ウン十年前の作品をこの2022年に実写化したんだから多様性を盛り込むのはあたりまえだし、ポアロのドラマを掘り下げたのはポアロ役もやってるケネス・ブラナー監督が独自の味付けをしたってことで、いまどきの実写化ってそんなもんじゃないですかね。ガイリチのホームズとかもそうだし。
原作に忠実に実写化したものが観たいっていう願望は、原作が古ければ古いほど今はもうなかなか叶えられない気がします。だって古いもん……。